名古屋芸術大学大学院第9回終了演奏会 本文へジャンプ

私、2年ぶりに名古屋芸術大学大学院の演奏会を聴きに行ってきました。

  2007年3月8日PM6:30 しらかわホール

客席は3割程度のお客様でしたが、関係者が多いようで終始熱い拍手に包まれた暖かい演奏会でした。若きクラシック界を担う予定の演奏家を素人の私がファンとして感じたことを書いてみました。

市川麻紀子(フルート) フルート協奏曲第2番作品31 F・ダンツィ

グリーンのドレスにスラリとした体型、お嬢様のような品の良い顔立ちの演奏者です。

伴奏のオーケストラ、導入部のテンポ感が重くどんよりしていたが、ソリストは気にせず自分のテンポ感で演奏に入っていきました。ソリストは基本がしっかり出来ていて低音から高音まで均一したサウンド、テンポも乱れず安心して聴ける演奏でした。

譜面の細部まで真摯に正確に演奏されてました。演奏家としての基本部分はしっかりと出来ている人で好感がもてました。

この後は、完成された基本の上に聴衆の心をゆするような精神的にぐっとくる演奏が出来ればと期待いたします。好演でした。

演奏中赤ちゃんが泣いていて、私も気になりましたし演奏者も気が散ったのではないかと思いました。コンサートホールに臨時託児所が、あたり前のように出来ることを願った次第です。

原田裕貴(作品発表) OUTLAW

演奏の前に本人が曲の説明。

無調性の曲を作ろうと考えたが、調性と無調性の間のどちらかといえば調性の曲になってしまったが自分の意図は表現できたと思う。

と、言ってましたが聞いてた私はチンプンカンプンでよく意味が分かりませんでしたが、曲を聴けば分かるかなと思い期待して聴きました。

序奏はシェーンベルクのような弦楽器の響きから始まり、その後管楽器が笙のような和音で弦楽器にぶつけてきました。ここまでは面白く聴けましたが、そのあと不自然なドラやシンバルの強音。ここから作者の意図が良く理解できなくなってきました。効果的にパーカッションを使おう思っているようですが、上手く使えてないように感じました。

1つの曲として、どういう意図で何を訴えたいかは私には分かりませんでした。また、若者らしい実験的な試みもないように思いました。バラバラのパーツが集まり、そして、何もないという感じでしたが、良く理解できない方が大きな作曲家になる要素があるのかもしれません。

下平展子(ソプラノ)

 古画に寄せて 眠れる幼い児イエス もう春だ ミニヨン H・ヴォルフ

水色の鮮やかなドレス、胸元はキラキラと宝石をちりばめたような輝き、白い花の髪飾りの歌手。

この子は2年前に名古屋芸術大学卒業コンサートを聴いてます。その時は、ただパワフルで元気な子という印象で、当時はウェブ上で報告するほどの実力者とは思いませんでした。まったくノーマークでした。

しかし今回の演奏は、同一人物とは思えず、びっくりしました。いったい2年間の間に何がこの子を成長させたのでしょうか。

一つ一つの言葉を深くかみしめ、心を込めて伝えてくれます。2年前は押し一辺倒でしたが、押したり引いたり、押し方も斜めに押したり横に引いたりと、立体感のある計算された表現。

私の心を静かに引き寄せ、暖かく包み込む。聴いててドキドキしてきました。

ただ、私を冷静にさせたのは、セッティングのせいか変にこもったティンパニや弦楽器に溶けない大きな音のトランペットなど歌を引き立てない伴奏のおかげでした。(皮肉な表現で失礼)

一つ望むなら、フレーズが終わり、次のフレーズに行く空間のつなぎの表現(テクニック的なものもあるのかもしれない)が出きればもっとすばらしくなると思いました。

もう一つ望むならフィジカル面の強化です。小柄な体を充分使っていると思いますが、世界と戦うにはもっとパワーと排気量が必要です。5000ccクラスの外車に勝てるよう肉体改造に取り組んではいかがでしょうか。

終了後、どなたか優しい声で「ブラボー」と言ってましたが、私もブラボーです。

浅井寛子(ピアノ) 

 パガニーニの主題による狂詩曲 作品43 S・ラフマニノフ

青いドレスにパラシュートのように開いたスカート、ドレスに合わせた髪飾りをつけた演奏者。

音の弾き方が良く、ポンポンと綺麗な音が出てきました。体の動き方で一生懸命曲を揺らしたりいろんな表現をしようとしているのは分かりますが、音には伝わってこないところもあり、この差が私には良く分かりません。その辺がピアノの難しさなんでしょうね。

曲が盛り上がってくると、伴奏のオケ、特に金管がピッチずれのせいかやかましく聴こえました。伴奏のオケの皆さんも大変と思いますが、大人の演奏をしていただければと願った次第です。

以上がド素人のクラシックファンである私の感想です。地元名古屋からすばらしい芸術家の出ることを期待し、今回の演奏会を開催されたスタッフの皆様の努力に敬意を表します。ありがとうございました。